CNETによるACCS久保田氏の発言についての見解

テレビゲームソフトウェア流通協会(ARTS)
理事 赤 田 和 博

                      

 ネットニュース(CNET)によるとACCS久保田氏は最高裁判決について次のような発言を行ったと報道されています。事実ならば大変遺憾とするところです。
 

「中古ゲーム販売訴訟判決は小売店に打撃」ACCS久保田専務理事 
http://japan.cnet.com/News/Infostand/Item/2002-0614-J-6.html

(1)席上、久保田専務理事は「(判決は)あくまで『物』を売る立場でしか見ておらず、『情報』を売る場合のことを想定していない」と批判。メディアの外面のみにとらわれて、情報コンテンツとしての視点に欠けていると主張した。 

(2)さらに、「これまでは、中古販売というグレーゾーンには量販店が参入してこなかったから、小売店との住み分けができていた」と指摘。今後は「新品販売も中古販売も量販店が参入して価格競争になることが考えられる。そうなると、むしろ小売店の首を締めることになるのではないか」と警告した。 
 また今後の対応について久保田専務理事は、「消尽しない頒布権を認めて、JASRAC方式の許認可制中古販売を行った方が、量販店、小売店ともにメリットがあるはずだ」と自説を展開。ACCSが主張してきたJASRAC方式へのこだわりを見せた。 

(3)現在、ACCSは、新しい著作権管理の枠組みを作ることを目指して、他メディア企業や著作権管理団体などとともに検討を進めており、必要ならば法改正も求めていくという。
 

 先ず(2)に関してですが、中古ソフト訴訟が裁判所だけでなく、SCE独禁法違反事件として公正取引委員会でも争われていたことを忘れているかもしれないので概括しておきます。
 SCEは94年のPS発売に際して、ソフトメーカー取り込みのために価格維持,中古禁止、転売禁止を販売店に強要し、不公正な取引として公正委員会に独禁法違反で排除勧告を受け、2001年8月に審決を受け入れて終了しています。
 審決では「中古品取り扱い禁止行為は、新品PSソフトの再販売価格の拘束行為の実効的な実施に寄与し、同行為を補強するものとして機能していると認められる。その点において再販売価格の維持行為に包含され、同行為全体として公正競争阻害性を有するものと認められる。」(審決の概要)と、違法性が確定しています。中古規制の本質的なねらいは競争制限であることは明らかであり、審決は公正な判断と考えています。
 このたびのACCS久保田氏の提案「頒布権による許認可制中古販売」は公正で自由な競争を制限するものであり、我々販売店の意図するところではありません。そもそも中古売買は本質的に「ユーザー間取引」であり許認可制になじむものではありません。
 むしろSCEとともに中古裁判に関与したACCS久保田氏が、違法行為が行われた自覚もなくまたしても競争制限を呼びかけることには驚くばかりであります。

 次に(1)に関してですが、これだけでは意味するところは図りかねますが、申し添えます。中古ゲームソフト裁判はゲームソフトの商品特性・損害の有無の論議も行われています。例えば

(ア)「劣化しない」は複製を重ねた時だけ意味があり,ゲームソフトは複製できない。

(イ)ゲームソフトは真正品の売買であり、「劣化しない」は情報媒体としての最低条件であり,何ら特筆に価しない。CD-ROMはむしろ傷により読み取り不能となりやすい媒体である。

(ウ)ゲームソフトは他のエンターテイメントソフトと同様に急速な需要減退があり、中古価格が需給関係を反映するが、新品は価格が硬直的であり売れなくなる。

(エ)中古売買と新品販売は、「下取り効果」、「試体験効果」、「評判形成効果」、「客層拡大効果」という相互補完関係をもち、ユーザーは「売買差額」でゲームを楽しんでいるから中古がなくなれば新品販売も冷え込むと予想される。

(オ)新品と中古が価格競争して需要拡大に努めること産業保護につながる。

 などの論議を通して、「デジタル著作物としてのゲームソフト」について中古売買の是非を争ってきました。また「消尽なき頒布権」は世界標準に反し、所有権や独禁法などとも調整困難な問題を生み出す点も主張されました。この論議過程の詳細はARTSホームページ(http://www.arts.or.jp)「裁判報告」で公開しています。
 これらの論議の結果「仮に,著作物又はその複製物について譲渡を行う都度著作権者の許諾を要するということになれば,市場における商品の自由な流通が阻害され,著作物又はその複製物の円滑な流通が妨げられて,かえって著作権者自身の利益を害することになるおそれがあり,ひいては『著作者等の権利の保護を図り,もつて文化の発展に寄与する』(著作権法1条)という著作権法の目的にも反することになり」(最高裁判決)として、頒布権の消尽を認めたのです。
 最高裁判決は「現行法としてやむなし」という判断でなく、まさしく「デジタル著作物であるゲームソフト」の頒布権について争われ、その結果として、法文に消尽の明記がないにも関わらず、所有権と無体財産権の基本的な調整原理としての頒布権の消尽を、解釈として積極的に認めたものであります。

 終わりに(3)に関してですが、裁判に負けたから法改正を求めるかのようですが、98年より4年間我々は多大な労力とコストと時間を費やしています。その間販売店とソフトメーカーは反目し、業界の不振は日増しに強まっています。
 裁判に関与したACCS久保田氏が最高裁判決に反して法改正を求めるならば、単に判決への不満を申し述べるだけでなく、せめてSCE独禁法違反事件への見解と裁判の敗因の分析を詳細に明らかにすべきであります。総括なくして再度法改正で対立を助長されることは業界にとって大変迷惑であります。