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平成10年(ワ)第22568号 準 備 書 面(一)
| 原 告 |
株式会社 上 昇 |
| 被 告 |
株式会社 エニックス |
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平成10年12月22日
| 被告代理人 |
| 弁 護 士 |
濱 野 英 夫 |
| 同 |
山 崎 龍 一 |
| 同 |
伊 藤 真 |
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東京地方裁判所 民事第四六部B係 御 中
第一 被告の著作権
被告は、本件ゲームソフトのいずれについても著作権を有する。その理由は以下のとおりである。
一、 被告は、左のとおり本件各ゲームソフトを製作した。
(一) スターオーシャンセカンドストーリー(以下「目録一のゲームソフト」という)について
被告は、平成8年7月頃より、訴外株式会社トライエースと共同して目録一のゲームソフトの開発にとりかかり、平成10年7月頃これを完成し、同月30日これを商品として発売した。
なお、このゲームソフトの一部(ゲーム画面を伴わないもっぱら視聴覚的鑑賞の対象とされる映像部分―仮に「ムービー部分」という)については、訴外株式会社リンクスに製作を依頼して作成した。
(二) バスト ア ムーブ(以下「目録二のゲームソフト」という)について
被告は、平成8年11月頃から訴外株式会社メトロと共同して目録二のゲームソフトの開発にとりかかり、平成9年12月頃これを完成し、平成10年1月29日これを商品として発売した。
なお、このゲームソフトの音楽については、訴外エイベックス・ディー・ディー株式会社に作成を依頼し、その許諾を得てこれを使用している。
二、 本件ゲームソフトは、いずれも家庭用テレビゲーム機「プレイステーション」用のソフトウェアとしてCD−ROMの形態で収納されている。
本件ゲームソフトには映像に伴う視覚的表現と、直接には知覚し得ない言語的表現、すなわちプログラムが含まれているが、これらの表現物は、いずれも被告と前記共同開発者との精神的共同作業の成果としてつくられたものである。そして、これらの表現物はいずれもその作成物の思想又は感情を創作的に表現したものとして著作物にほかならないので、これらについて生じた著作権は両者が共同で原始的に取得したものということができる(このような考えのもとに、両者間において乙第4号証「開発基本契約書第14条第1項で目録一のゲームソフトについて、また乙第6号証右同標題の契約書第12条第1項で目録二のゲームソフトについて、それぞれ包括的に著作権共有を約定している)。
なお、目録一のゲームソフトのうちムービー部分については被告がこれに関する著作権を株式会社リンクスから譲り受け(乙第5号証「契約書」第7条際1項参照)、また目録二のゲームソフトの音楽については被告がエイベックス・ディー・ディー株式会社からこのゲームソフトに使用される音楽著作物の使用許諾を受けている。
三、 右二、において述べたところを図説すれば次のとおりである。
(1) 目録一のゲームソフト
(イ) 左記(ロ)を除く全体について
被 告
トライエース |
⊃ |
共同
開発 |
著作権原始取得
―――――――→ |
共 同
著作権者 |
(ロ) ムービー部分
リ ン ク ス |
著作権譲渡
―――――――――→ |
被告・著作権者 |
(2) 目録二のゲームソフト
(イ) 左記(ロ)を除く全体について
被 告
メ ト ロ |
⊃ |
共同
開発 |
著作権原始取得
――――――――→ |
共 同
著作権者 |
(ロ) 音楽について
エイベックス・ディー・ディー |
使用許諾
―――――→ |
被 告 |
四、 ところで、本件各ゲームソフトの含まれる視聴覚的表現物は、後記第二において述べるようにいずれも著作権法にいう「映画に著作物」に該当するものである。そして、被告は右映画の著作物の製作者であり、また、各共同開発者ならびに、ムービー部分の製作者(リンクス)および音楽の製作者(エイベックス・ディー・ディー)は、いずれも被告に対し、当該映画の著作物の製作に参加することを約束している。したがって、本件各ゲームソフトに含まれる映画の著作物の著作権は、著作権法第29条に基づいて被告に帰属するものというべきである。少なくとも乙第4号証、同第6号証における前記共有約定に基づいて、持分二分の一の共有著作権を有しているものということができるのである。
第二 本件各ゲームソフトの映画著作物性
一、 ゲームの概略
(一) スターオーシャンストーリー
このゲームはいわゆるロールプレイングゲームとよばれる種類のもので、遊戯者は映像や文字等の表現をもって逐次展開されていく画面にしたがって操作を行いながらゲームを楽しみつつストーリーを進行させていくものである。
本件ゲームでは、クロードとレナという男女二人の主人公が用意されており、遊戯者はそのどちらかを選択して主人公を決め進行させる。そして主人公は呪文、武器、アイテム、特技その他の能力を用いながら数々の謎を解き、手強いモンスターたちと壮絶な戦いを経て壮大な冒険の旅を展開し、最終ボスを倒してエンディングに至るというストーリーを有している。
(二) バスト ア ムーブ
このゲームは、リズムにのってコントローラーのボタンを押し、キャラクターを踊らせることによって、ダンスのかっこ良さやノリ具合を競い合わせる対戦型のゲームである。一対一でダンサー達が自分の技を競い合い、どちらがカッコ良くノッていたかを判定し勝敗を決めるゲームである。
二、 本件ゲームソフトの映画性
本件各ゲームソフトは、いずれもゲーム的要素を有することはいうまでもない。しかしながら、ゲームは主人公(目録一のゲームソフト)あるいはダンサー(目録二のゲームソフト)といったキャラクターを遊戯者自身に置き換えて、それぞれのストーリーや舞台の中心を構成させていく。
その際目録一のゲームソフトにおいて主人公は仮想の地を旅し、様々な場所で敵と遭遇し、これと戦ったり、人と出会ってこれと心の交流を深めたりする。
また、目録二のゲームソフトでは、舞台の中で相手のダンサーと動きの激しさを競い合って得点を高めていく。
このようなゲームの過程が四次元的時空を表わす舞台の中で動態的に映像化され、かつこれに音楽がシンクロナイズされて、視聴覚的鑑賞性を生み出しているのである。これについては現在における芸術的ジャンルの分類を求めるならば「映画」以外に見出すことができない。
三、 本件各ゲームソフトの映画著作物性
(一) 著作権法は「映画の著作物」を著作物の例示中に列挙し(第10条第1項7号)、かつ「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定させている著作物を含むものとする」と規定している(同条第3項)。
映画は、発生史的にはいわゆる劇場用映画として登場したことはいうまでもない。しかしながら、視聴覚的作品を保持する媒体やその上映場所などは、技術の進展や鑑賞方法の変化などにしたがって変わることがありうることは予想されるところである。第10条第3項の規定が設けられたのは、このような変化に対応して映画著作物を開かれたものにしておくためのものと考えられる。
(二) 本件各ゲームソフトはいずれも前記二、において述べたとおり映画のジャンルに属するものである。ゲーム性は映画性を打ち消すことにはならない。映画という芸術形式に遊戯性があってはならないという理由は見出し難いといわなければならない。
(三) 著作権法における前記規定は「固定」性を要件としている。この要件は、一つには著作物論の中でかつて著作物は有形的存在か無形的存在かが議論されたことがあるが(山本桂一「著作権法」法律学全集54−U 33、34頁)、そうした議論を視野におさめながら、映画を無形物であるテレビ番組による生放映と概念上分別するため、映画著作物についてのみ有体物への固定化を要件としただけのことである。
それは映画著作物が何らかの有体物である媒体によって保持されていることを要するというだけのことであって、それ以上の意味を有しているわけではない。ことに媒体の種類をフィルムに限定したり、再生される映像の表出の仕方や個々の順序まで限定する趣旨は全く含まれていないというべきである。
本件各ゲームソフトは、いずれも有体物であるCD−ROMに収納されているものであるが、これから映像を生じさせる技術的な仕組みは、ROMに記憶されているプログラムの命令により、同じくROMに収められている影像(及び音声)データが抽出されて、ゲーム機の表示装置の指定された位置に順次表示され(及び音声効果を生じさせ)ていくというものである。つまり本件各ゲームソフトにおける視聴覚的表現物は、CD−ROMという有体物に再生可能な状態で「固定」されているということができるのである。
(四) 本件各ゲームソフトは、最終的に仕上げられた視聴覚的表現に向けられた様々な分野における参加者の、それぞれの個性に応じた精神活動の成果であって、そこにはこれらの参加者のそれぞれの思想・感情が複合的に集積されているものである。
(五) 以上のとおり、本件ゲームソフトは著作権法において規定された「映画の著作物」の要件をすべて満たしており、これについて映画の著作権を生じさせるものであるというべきである。
なお、付言すればゲームソフトの映画著作物性については、原告も挙げているようにこれを肯定するいくつかの裁判例が既に存在し、否定的見解をとる裁判例は存在しない。また最近公表された著作権審議会第一小委員会の「著作権審議会における審議結果」の「まとめ(概要)」(乙第9号証)の部分でも次のとおり述べられている。
「(映画の著作物の頒布権について)
現在、映画の著作物について認められている頒布権は消尽しないものと解されており、現時点で従来の取扱いを変更すべき理由も見出しがたいことから現行規定を維持することが適当。なお、ゲームソフトの取扱いについては、映画の著作物に該当するとの判例もあり、その解釈に委ねることとする。」
ゲームソフトの映画著作物性の有無については、さらに原告の主張との係わりにおいて詳説する予定である。
第三 被告の頒布権
一、 映画の著作者は、当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する(法第26条第1項)。 右「頒布」には最初の(第一次的)頒布という限定はない。
また、映画の著作物については貸与権が除かれており(法第26条の2)、その理由として映画の著作物については貸与行為をカバーする頒布権が認められいるから、と説明されている(加戸守行「著作権法逐条講義」新版162頁)。貸与は当然最初の頒布の後の流通形態として行われるものであるから、もし仮に法第26条第1項にいう頒布が最初の頒布に限定されるとすると、映画の著作物については、貸与権も第二次以下の頒布権もないことになって、他の種類の著作物よりかえって著作権の範囲が狭くなってしまうというおかしな結果になってしまう。
二、 複製権は、著作物の流通過程において現実には最初の頒布をコントロールする機能を発揮している。旧著作権法のもとで頒布権については特に規定はなかったが、複製権と密接な関連を有する権利として(最初の)頒布権が著作権の内容をなすものとして講学上説かれていた(榛村専一「著作権法概要」181頁 昭和8年巖松堂刊)。
現行著作権法においては、著作物全般について複製権を認めたうえで、映画の著作物については特に頒布権をも認めることにしたのである。ということは、複製権とパラレルに認められる最初の頒布権にプラスされた頒布権、つまり第二次以下の頒布についても専有権をみとめるということを意味していると解すほかない。
三、 右に述べたとおり、現行著作権法上映画の著作物について認められる頒布権は最初の頒布行為に限らずそれ以後の頒布行為全般について及ぶものと解釈される。
そして、本件各ゲームソフトは映画の著作物に該当することは前述のとおりであるから、これについての著作権者である被告は、本件各ゲームソフトの頒布行為全般をコントロールすることができる頒布権を有することは明らかである。
第四 原告の無許諾頒布行為
一、 原告は、総合リサイクルショップとして日本の各地にわたりフランチャイズ店の経営を展開しており、その店舗数は被告が調査したところによると現在225点ほどに達し、さらにアメリカにおいても店舗数を増やしつつある。そして、その取扱い商品の中には中古ソフトも含まれており、本件各ゲームソフトも中古品として原告において販売していることは原告の自認するところである。
二、本件各ゲームソフトの原告による販売について被告は許諾を与えていない。
第五 差止請求権の発生
被告が本件各ゲームソフトについて、映画の著作権に基づく頒布権を有することはこれまでに述べてきたとおりであり、原告は本件各ゲームソフトの中古品を被告の許諾なく営業として販売することにより被告の頒布権すなわち著作権を侵害していることは明白である。
よって被告は原告に対し、右侵害行為の停止を求める権利があるものというべきである(著作権法第112条第1項)
第六 原告の主張に対する反論
原告の映画著作物性、ファーストセール、消尽論等の主張に対しては、次回においてまとめて反論する予定である。
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