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1998年10月5日
中古ソフト問題・大阪訴訟・被告弁護団
中古ソフト問題・東京訴訟・原告弁護団
1 中古ゲームソフト問題の経緯について
普通の商品については、メーカーが製作して一旦販売した後は、その後の流通についていちいちメーカーの許諾が必要であるとは主張されていません。自由主義市場経済の下では商品の自由な流通が不可欠です。
ところが、メーカーが製作して一旦販売した後でも、その後の流通についていちいちメーカーの許諾が必要であるとは主張されている商品があります。コンピュータ用のゲームソフトです。
本年1月14日、ゲームソフトメーカーの団体であるコンピュータエンターティンメントソフトウエア協会(CESA)は、コンピュータソフトウエア著作権協会(ACCS)、日本パーソナルコンピュータソフトウエア協会(パソ協)と共に、ゲームソフトは「映画の著作物」であり「頒布権」(著作権法第26条)があるとの主張に基づき、「違法中古ソフト撲滅キャンペーン」を開始しました。
私たちはこのような主張やキャンペーンが不当だと考えていますが、その理由は後述します。
その直後の1月20日に、公正取引委員会は、CESAの主要なメンバーである(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)に対して、中古品の取扱いを制限したことなどが独占禁止法違反になるとして排除勧告を行いました。
※公正取引委員会
「株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント
に対する勧告について」
http://ueno.cool.ne.jp/furuya_m/archive/file03.html#sce
しかし、SCEはその勧告に応じず、現在審判手続が行われています。
※公正取引委員会
「株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント
に対する審判開始決定について」
http://www.jftc.admix.go.jp/pressrelease/98.feb/980209.htm
CESA等は、その後もキャンペーンを続け、本年6月には東京で、7月には大阪で、CESAのメンバーを原告として、ゲームソフト販売業者等に対して、中古ゲームソフトの販売の差止めを求める訴訟を提起しました。
大阪で起こされた訴訟(以下、「中古ソフト問題・大阪訴訟」又は単に「大阪訴訟」といいます。)を契機に私たち弁護士20名は被告弁護団を結成し、訴訟活動にあたっています。
※大阪地方裁判所平成10年(ワ)第6979号(第21民事部係属))
頒布権に基づく差止請求事件
原告 ソフトメーカー側((株)カプコン外5名)
被告 ソフト販売業者側((株)アクト外1名)
この大阪訴訟の被告は、テレビゲームソフトウエア流通協会(ARTS)のメンバーである(株)アクトとそのフランチャイズ店の経営者で、ARTSがこの訴訟の被告を全面的に支援しています。なお、原告側がフランチャイズ店の営業主体を誤認して個人を被告としていたため、法人を被告とする別の訴訟が追加して提起されました。
去る9月3日に、第1回口頭弁論が開かれました。第2回口頭弁論期日は、11月19日に開かれます。
他方、東京で起こされた訴訟(以下、「対ドゥー訴訟」といいます。)は、被告が、電気製品等の量販店の会社の関連会社である(株)ドゥーで、ARTSのメンバーではありません。
※東京地方裁判所平成10年(ワ)第12874号(民事第46部係属)
頒布権に基づく差止請求事件
原告 ソフトメーカー側((株)カプコン外4名)
被告 ソフト販売業者側((株)ドゥー)
私たちが対ドゥー訴訟を傍聴した限りでは、被告の主張が限定されていて、本来行われるべき主張立証活動が十分に行われないおそれがあり、したがって十分な審理が尽くされないおそれがあると判断しました。
2 東京訴訟の提訴について
私たちは、対ドゥー訴訟で十分な審理が行われないままに判決が出され、それにもかかわらず1つの先例になってしまうおそれ、そして、大阪訴訟にも何らかの悪影響を与えるおそれがあると判断しました。そして、より基本的には、この問題が著作権のあり方に大きく影響し、また、「頒布権」の対象を広げようという動きもあることから、問題の重要性に鑑みて、東京でも本格的な訴訟活動が行える機会を持つことが有益だと考えました。
そして、本年8月に、ARTSのメンバーである(株)上昇は、CESAのメンバーである(株)エニックスから、その発売するゲームソフトについて「頒布権」に基づき中古販売を中止することを求める旨の警告書を受領しました。
そこで、本日、(株)上昇を原告とし、(株)エニックスを被告として、(株)上昇が行うゲームソフトの販売について「頒布権」に基づく差止請求権がないことの確認を求める訴訟(以下、「中古ソフト問題・東京訴訟」又は単に「東京訴訟」といいます。)を東京地方裁判所に提起しました。
※東京地方裁判所平成10年(ワ)第22568号(民事第46部係属)
頒布権に基づく差止請求権不存在確認請求事件
原告 ソフト販売業者側((株)上昇)
被告 ソフトメーカー側((株)エニックス)
(株)上昇はARTSのメンバーであり、ARTSはこの訴訟の原告を全面的に支援しております。また、大阪訴訟の被告弁護団全員で東京訴訟の原告弁護団を構成しました。
<添付資料>
*訴状
3 公正取引委員会への排除勧告の要請について
CESA及びそのメンバーは、卸売業者や小売業者にゲームソフトの中古品を扱わせないようにするために様々な行為をしています。
(株)上昇及び(株)アクトは、本日、東京訴訟の提訴と同時に、(株)エニックス及びCESAが、独占禁止法違反の行為をすることを取りやめることを内容とする勧告をなすように公正取引委員会に要請書を提出しました。
以下、事実関係と法令の適用関係について少し説明します。
1.(株)上昇は新品及び中古のゲームソフトを販売しており、(株)アクトは「わんぱく小僧」の名称で新品及び中古のゲームソフトを販売するフランチャイズチェーンの本部です。
(株)エニックスはドラゴンクエスト等のテレビゲームソフトの開発製造販売会社であり、CESAは主として家庭においてコンピュータ等で遊び楽しむソフトウェアの調査、普及、啓発等によりその新興を計ることを目的とする社団法人で(株)エニックス等多数のゲームソフトメーカーが会員となっています。
2.(株)エニックスは、従前、(株)ソニー・コンピュータエンターテイメント(SCE)の家庭用テレビゲーム機プレイステーションその他のゲーム機で稼働するソフトウェアを開発製造してその全量をSCEその他のハードメーカーに販売し、SCE等はこれを(株)上昇、(株)アクトを含む卸業者・小売業者に販売していました。
(株)エニックスは1997年12月頃より上記のような流通形態を変更し、小売業者やフランチャイズ本部に対し直接ソフトウェアを販売する直販方式に変更しました。そして、(株)上昇及び(株)アクトを含むゲームソフト販売業者に売買取引契約書を送付してきましたが、その契約書には、ゲームソフトを「家庭内等での個人使用を目的とした一般顧客のみに販売すること」「エニックスの営業方針に協力するようできるかぎり努力すること」「(1998年12月31日以降)商品を中古ソフトとして販売しないこと」との条項があり、これに違反した場合には契約解除や出荷停止が定められていました。
(株)アクトはゲームソフトの中古品販売は適法であると確信しているため、上記中古販売禁止条項のある契約の締結はできない旨を伝え、1998年7月23日に(株)エニックスに対して同社の発売予定であった「スターオーシャンセカンドストーリー」を5000個発注しましたが、(株)エニックスは同ソフトの発売時期になっても(株)アクトに対して1本の供給もしませんでした。
(株)上昇も同様に同契約書の中古販売禁止条項の撤回を求めましたが、受け入れられず、やむなく同業者等から(株)エニックスのソフトを仕入れて販売すべくチラシを出したところ、(株)エニックスより内容証明郵便によって中古販売の中止と謝罪を求める警告書を送付されました。
(株)エニックスは上記の他、1998年7月頃から人気ソフトである「ドラゴンクエスト」の注文を受けるにあたり、問屋に対して(株)エニックスの販売している「ポケモン・エンピツ」をソフトの7倍購入すれば同ソフトを割り当てるという抱き合わせ販売を行いました。
3.CESAは正当な法的根拠もないまま、社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(パソ協)、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)と共同して、ゲームソフトの中古販売を禁止する[NO RESALE]マークを制定し、新聞やゲーム専門誌に中古販売が違法であるとの意見広告を掲載し、CESAの会員にゲームソフトのパッケージや製品広告に中古ソフト販売を禁止する文面を記載するよう奨励しています。
CESAのこのような行為は、事業者団体として、会員に対して適法な中古販売を禁止させる行動を奨励するものであり、上記(株)エニックスの不当な契約の押しつけを誘発しているものといえます。
4.(株)エニックスの上記行為は、著作権法上の根拠なくして、製品供給者としての優越的地位を濫用し、小売業者らに中古販売の禁止を強制するという拘束取引条件を課すものであり、独占禁止法第2条第9項第4号及び一般指定(不公正な取引方法)13項「拘束条件取引」、並びに同法同条同項5号及び一般指定14項「優越的地位の濫用」3号・4号に該当します。
<参考>
独占禁止法第2条第9項
この法律において不公正な取引方法とは、左の各号の一に該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう。
一 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
二 不当な対価をもつて取引すること。
三 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
四 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
五 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
六 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、若しくは強制すること。
一般指定「不公正な取引方法」(昭和57年6月18日公正取引委員会告示)
(拘束条件付取引)
13 前二項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引するこ と。
(優越的地位の濫用)
14 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。
一 継続して取引する相手方に対し、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
二 継続して取引する相手方に対し、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
三 相手方に不利益となるように取引条件を設定し、又は変更すること。
四 前三号に該当する行為のほか、取引の条件又は実施について相手方に不利益を与えること。
五 取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二条第三項の 役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。
5.CESAの上記行為は、事業者団体の行為として、独占禁止法第8条1項5号「事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること」に該当します。
<参考>
独占禁止法第8条第1項
事業者団体は、次の各号の一に該当する行為をしてはならない。
一 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。
二 第六条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること。
三 一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。
四 構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動を不当に制限すること。
五 事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。
6.よって、(株)上昇及び(株)アクトは、(株)エニックスに対して、
(1)小売業者に対して中古ソフトの取扱をさせないようにすることを要請し、守らせている行為を取りやめること、
(2)小売業者に対して家庭等での個人使用を目的とした一般顧客のみに販売することを要請し、守らせている行為を取りやめること、
(3)売買取引契約書中の上記(1)(2)記載の条項を削除すること、
(4)上記(1)(2)記載の条件に同意しないため売買取引契約を締結せず、ゲームソフトを供給しない行為を取りやめること、
(5)小売業者の顧客への販売価格を拘束しないこと、
等の排除勧告をなすよう公正取引委員会に対して要請し、
また、CESAに対して、
(6)「違法中古ソフト撲滅キャンペーン」を行わないこと、
(7) 違法中古ソフト撲滅キャンペーン用の[NO RESALE]マーク、パンフレット、文書を廃棄し、ホームページを中止して、これを使用しないこと、
(8)ゲームソフトのパッケージ上に中古販売禁止の文面を記載することを奨励することを取りやめること、
等の排除勧告をなすよう公正取引委員会に対して要請しました。
私たちとしては、今後、SCEに対する審判手続の推移に関心を持ちつつ、必要な資料を公正取引委員会に提出していきたいと考えています。
<添付資料>
*排除勧告要請書
4 中古ゲームソフト売買違法論の不当さについて
CESAなどの主張は、
(1) ゲームソフトは「映画の著作物」に該当する。
(2) 「映画の著作物」には無制限の「頒布権」が認められる。
(3) したがって、ゲームソフトには無制限の「頒布権」が認められるから、著作権者の許諾がない中古ゲームソフトの売買は違法である。
というものです。
この(1)の主張と(2)の主張のどちらか1つでも否定されれば、(3)の結論は成り立ちません。
なお、(2)の主張は新品も中古品も含むものですから、CESAなどの主張によれば、新品・中古品を問わず、商品の流通を末端まで完全にコントロールできるという主張になります。
私たちは、このような主張が不当であることについて、大阪訴訟・東京訴訟で、また、それ以外の場でも詳細に論じていく予定ですが、要点を簡単に紹介しておきます。
(1) ゲームソフトは「映画の著作物」に該当するとは言えません。
<1> ゲームソフトは、「映画の著作物」の要件を充たしていません。
(細かい法解釈論になるので、詳しい説明は割愛しますが、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され」たものに該当せず、「物に固定されている著作物」に該当しません。)
<2> どの条文も立法の趣旨に即して解釈されなければなりませんが、著作権法第26条が「映画の著作物」についてだけ「頒布権」を認めたのは、劇場用映画特有の流通形態を保護するためであり、その立法趣旨からすると、流通形態が劇場用映画と異なるゲームソフトについては「頒布権」が認められる「映画の著作物」と解釈すべきではありません。
(2) 「頒布権」には限界があります。
<1> 「頒布権」については、「頒布」が最初に流通におくこと(第一頒布)を意味するとするか、複製物が最初に適法に流通に置かれた後は「消尽」する(「頒布権」が及ばない)とすること(いわゆるファーストセール・ドクトリン(第一次販売の法理)を認めること)が世界的な常識であり、グローバル・スタンダードです。
(条約や各国の法制についての詳しい説明は省略します。なお、国境を越えての流通については議論があります。)
<参考>
「頒布権とその制限ー外国の状況(暫定版)」
http://www.asahi-net.or.jp/~ZG2Y-FJT/copy_r/hanpu_gaikoku.html
<2> 特許権について「消尽」を認めたベーベーエス(BBS)事件最高裁判決(平成9年7月1日)の趣旨からしても「頒布権」は商品が最初に適法に流通に置かれた後は「消尽」すると考えるべきです。
(特許権よりも著作権を強力に保護すべき合理的理由はありません。また、特許法にも「消尽」を定める明文はありませんから、著作権法に「消尽」を定める明文がないことを理由に「消尽」を否定することはできません。)
<参考>
最高裁第3小法廷平成9年7月1日判決(民集51巻6号2299頁、判例時報1612号3頁など)
http://courtdomino.courts.go.jp/judge.nsf/39ddf8baffe316724925645a003176d9/ d382f5725781aff049256507001ce043?OpenDocument
「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有するものとされているところ(特許法68条参照)、物の発明についていえば、特許発明に係る物を使用し、譲渡し又は貸し渡す行為等は、特許発明の実施に該当するものとされている(同法2条3項1号参照)。
そうすると、特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者から当該特許発明に係る製品(以下「特許製品」という。)の譲渡を受けた者が、業として、自らこれを使用し、又はこれを第三者に再譲渡する行為や、譲受人から特許製品を譲り受けた第三者が、業として、これを使用し、又は更に他者に譲渡し若しくは貸し渡す行為等も、形式的にいえば、特許発明の実施に該当し、特許権を侵害するようにみえる。
しかし、特許権者又は実施権者が我が国の国内において特許製品を譲渡した場合には、当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し、もはや特許権の効力は、当該特許製品を使用し、譲渡し又は貸し渡す行為等には及ばないものというべきである。
けだし、
(1) 特許法による発明の保護は社会公共の利益との調和の下において実現されなければならないものであるところ、
(2) 一般に譲渡においては、譲渡人は目的物について有するすべての権利を譲受人に移転し、譲受人は譲渡人が有していたすべての権利を取得するものであり、特許製品が市場での流通に置かれる場合にも、譲受人が目的物につき特許権者の権利行使を離れて自由
に業として使用し再譲渡等をすることができる権利を取得することを前提として、取引行為が行われるものであって、仮に、特許製品について譲渡等を行う都度特許権者の許諾を要するということになれば、市場における商品の自由な流通が阻害され、特許製品の円滑な流通が妨げられて、かえって特許権者自身の利益を害する結果を来し、ひいては「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与する」(特許法一条参照)という特許法の目的にも反することになり、
(3) 他方、特許権者は、特許製品を自ら譲渡するに当たって特許発明の公開の対価を含めた譲渡代金を取得し、特許発明の実施を許諾するに当たって実施料を取得するのであるから、特許発明の公開の代償を確保する機会は保障されているものということができ、特許権者又は実施権者から譲渡された特許製品について、特許権者が流通過程において二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないからである。」
(3) 日本の法制は全体として中古ゲームソフトの売買を合法としています。
<1> 自由主義市場経済を基本とする日本の法制では商品の流通の自由が不可欠です。そのために独占禁止法は不当な取引制限や不公正な取引方法などを禁止しています。中古ゲームソフトの売買を制限することは独占禁止法に違反します。
<2> 地球温暖化問題を含め、今後ますます環境の保護が重要になってきます。日本の環境基本法・環境基本計画等からしても、「使用済み製品の再利用の促進」が強く求められており、中古品市場の存在は日本の環境法制に適合します。中古ゲームソフトの売買を禁圧することは、人類の最重要課題の1つである環境保護に反します。
<3> 古物営業法はゲームソフトの中古売買が適法であることを前提としています(古物営業法第15条第1項第1号、古物営業法施行規則第16条第2項第2号)。
<参考>
古物営業法施行規則
(古物の区分)
第2条 法第5条第1項第3号の国家公安委員会規則で定める区分は、次のとおりとする。
一 美術品類(書画、彫刻、工芸品等)
<中略>
一〇 道具類(家具、じゅう器、運動用具、楽器、磁気記録媒体、蓄音機用レコード、磁気的方法又は工学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物等)
<以下略>
(確認等の義務を免除する古物等) 第16条 法第15条第1項第1号の国家公安委員会規則で定める金額は、1万円とする。
2 法第15条第1項第1号の国家公安委員会規則で定める古物は、次の各号に該当する古物とする。
<中略>
二 専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物
(4) 違法論が主張する心配には合理性・正当性がありません。
違法論は中古ゲームソフトの売買によりゲームソフトメーカーの利益が害されるとして各種の主張をしていますが、それらには合理性・正当性がありません。主な主張について簡単に述べます。
<1> 中古品として販売された本数について新品を販売できる機会を喪失し、損害を被るという主張(販売機会喪失論)について
中古品市場がなければ新品の販売が増加したはずであるとは言えません。例えば、ユーザーのかなりの部分を占める子どもたちは、購入したソフトを使用した後に中古市場に売却し、その代金と小遣いを併せて、別の新品を購入することが多いですから、もし中古品市場が存在しなければ、新品の購買力が低下します。
また、ゲームソフトの中には使用してみて面白さを感じない「クソゲー」と呼ばれるソフトも多いです。もし中古品市場がなければ、購入するソフトが「クソゲー」であるリスクとの関係で購入が抑制されます。
したがって、中古市場があるからこそ新品が多く売れるという面を否定できません。なお、例えば、自動車については新車市場と中古車市場が共存共栄の関係にあるとされています。ゲームソフトについても同様な状況があります。
<2> 開発に巨額の資金がかかるが、中古品市場があると、投下資本が十分に回収できないという主張(投下資本回収不能論)について
<1>を前提にしている点で不当ですが、その点を別にしても、自由主義市場経済の下においては、製造にあたり投入した資金が必ず回収されることが保障される商品などは存在しません。投下資本の金額にかかわらず売れるかどうか、いかなる価格で売れるかどうかなどは消費者の判断に委ねられています。
ゲームソフトについては開発に資金をかけすぎであるという指摘もあります。いくらでも資本投下をすればよく、そして、投下した資本は必ず回収が保障されるべきであるということにはなりません。市場で価格性能比が肯定的に受け入れられるかどうかについての読みは企業家の判断の問題です。
<3> 中古品市場があると、新品の価格を高くせざるをえず、高い価格で購入することになるユーザーに不利益をもたらすという主張(価格高騰論)について
これも<1>を前提にしている点で不当ですが、その点を別にしても、いかなる価格を設定するかは売主の自由です。売主が設定した価格で売れるかどうかは価格効用比等についての消費者の判断によります。
<4> 中古品市場があると、メーカーの商品開発意欲が減退し、ゲームソフト産業が衰退するとの主張(開発意欲減退・産業衰退論)について
これまで中古ゲームソフト市場が現実に存在してきたにもかかわらず、ゲームソフトの開発・販売活動は活発に行われてきましたから、正当な心配とは言えません。
どんな商品の市場についても、価格効用比等についての消費者の判断を踏まえて開発意欲を持つ者が市場に参入することで成り立っています。
(5)結論として
日本においてだけ(世界の常識ないしグローバル・スタンダードに反して)、ゲームソフトについて無制限に流通をコントロールする権利を認め、特別な保護をすべき合理的理由は考えられません(日本だけがゲームソフトについて特別な保護をすると国際的な経済紛争に発展する危険があります。)。
また、日本において、ゲームソフトについてだけ(他の多種多様の著作物や商品と異なって)、無制限に流通をコントロールする権利を認め、特別な保護をすべき合理的理由は考えられません(同様な流通形態の各種の商品ー著作物では、例えば、書籍。コンピュータ・ソフトが組み込まれている商品としては、例えば、自動車、家電製品など。知的財産権が関係する商品としては、特許技術を利用した各種商品、商標が付された衣服などでは、中古品売買が禁止される(あるいは、禁止されるべきだ)という主張はありません。)。
<参考>
藤田康幸(弁護士)・藤本英介(弁護士)・小倉秀夫(弁護士)著
『著作権と中古ソフト問題 ーいま問われる著作権のあり方ー』
発行:(株)システムファイブ(TEL 03-5340-1221)
10月20日発行予定
5 広報について
大阪訴訟・東京訴訟の論点や帰趨は、著作権のあり方(著作権法の目的である文化の発展)、今後予定されている著作権法改正に関係するため、私たち弁護団としては、本訴訟での主張・立証活動の内容を広く国民の皆さんに知っていただきたいと考えています。
したがって、毎回の口頭弁論期日等の内容について可能な限り情報を提供させていただくつもりです。
大阪訴訟・東京訴訟の経過や内容については、被告を全面的に支援しているARTSが広く情報提供をしていきますので、弁護団としてもその情報提供に協力していきます。
なお、ARTSはインターネット上でも両訴訟についての情報を提供していきますので、ARTSのホームページをご参照いただければ幸いです。
※「ARTS裁判報告」
http://www.arts.or.jp/judge/judge_tokyo.html
弁護団の広報関係の窓口については藤田康幸弁護士が主に担当しますので、法律的な事項についてのお問合せ等はまずは同弁護士にお願いします。
※〒102-0083 東京都千代田区麹町6-6-1 麹町松尾ビル5階
プライム法律事務所
弁 護 士 藤 田 康 幸
TEL 03-3221-7251 FAX 03-3221-7257
E-mail: y.fujita@f.email.ne.jp
以上
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