中古ソフト問題・東京訴訟
「被告側第四準備書面」



平成一一年(ワ)第二二五六八号
                                  原 告  株式会社 上   昇
                                  被 告  株式会社 エニックス

平成一一年三月一六日
 

被告訴訟代理人
  弁護士 牧 野 利 秋
    同 濱 野 英 夫
    同 山 崎 龍 一
    同     伊 藤   真
 

東京地方裁判所民事第四六部 御中

第四準備書面

第一 ゲームソフトの製作過程等について
  ゲームソフトの製作過程の概要は、大要左のとおりであり、劇場用映画と極めて類似するものである。

一 ゲームソフト製作の担当者

1本件各ゲームソフトの製作担当者は、前回の準備書面第四・二において述べたとおり、目録一のゲームソフトについては一一四名、目録二のゲームソフトについては五八名の者が、関与し製作されているが、それらの者のうち主要な者の役割は、概ね左の通りである。

(1)開発企画の責任者
 ゲームソフト製作全般についての最高責任者であって、ゲームソフト製作に参加する多数の担当者を統括し、企画を決定し予算や開発スケジュール等を管理する者。劇場用映画のプロデューサーに相当する。(以下、「プロデューサー」という。)

(2)ディレクター(監督)
 ゲームソフトのシナリオ、映像、音声、プログラムその他の素材の製作作業を全般的に指図し、監督して、ゲームソフトの全体な構成と内容について責任を負う者。(以下、「ディレクター」という。)

(3)キャラクター・デザイン担当者
 キャラクターの風貌、特徴、性格設定等の作成を担当する者。(以下、「キャラクター・デザイン担当者」という。)

(4)グラフィック・デザイナーその他の映像担当者
 ゲームソフト中のキャラクターの動きを表現する映像や背景となる映像、並びにオープニング画面その他随所で使用される高解像度のCG映像等の作成を担当する者。(以下、「映像担当者」という。)
 

(5)サウンド・クリエータその他のサウンド担当者
 ゲーム中の背景音楽(BGM)や音響効果の作成等を担当する者。(以下、「サウンド担当者」という。)背景音楽の作曲については、別に作曲家が存在している。

(6)プログラマー
 ゲームソフトのプログラム部分の作成を担当し、映像作成担当者が作成した映像をゲームソフトに組み込む作業等を行う者。(以下、「プログラマー」という。)

(7)シナリオライター(脚本)
 ゲームソフトの企画書に基づいて、物語の展開やゲームソフト中の台詞・ト書き等を作成する者。(以下、「シナリオライター」という。)

2 劇場用映画の製作には、映画の製作(プロデューサー)、監督、撮影監督、特撮監督、美術監督等の様々な者が関与するが、本件ゲームソフトも、これと同様に、きわめて多数の者が組織的に協力しあい、その創作活動を集約することによって、総合芸術としての一つの作品が完成されたものであり、その制作に携わる者の間における役割分担の状況等も、劇場用映画の製作の場合と殆ど同一である。
 すなわち、「プロデューサー」は、劇場用映画のプロデューサーに相当する者であるし、「ディレクター」は、映画監督と同様の役割を果たす者である。また、キャラクター・デザイン担当者は、劇場用アニメーション映画の原画制作者に類する者である。映像担当者やプログラマーは、キャラクターの動きや背景となる映像を作成して物に固定するものであって、劇場用映画の撮影監督や美術監督に相当し、また高解像度のCG制作においては特撮監督に相当する者ということができる(なお、高解像度CGは、劇場用映画においても昨今は必要不可欠のものとなっており、劇場用映画とゲームソフトとはとものCGを視覚的効果を生じさせる重要な部分として取り込んでいるのである。)。
 このように本件ゲームソフトの製作は、その映画製作者(著作権法二条一項一〇号)たる被告らの「発意と責任」のもとで、著作権法一六条が映画の著作者として定めている「製作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」がそれぞれの役割分担のもとで行う創作活動を一つの総合芸術に組織的に集約することによって行われたものである。
 さらに、著作権法は映画の著作物について「その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者」(いわゆるクラシカル・オーサー)野存在を予定している(著作権法一六条)が、本件ゲームソフトにおいても前述のとおり、脚本を担当するシナリオライターが存在しており、また、背景音楽等の作曲家が存在しているのであって、この点でも劇場用映画と相違がない。
 なお、劇場用映画では、その製作に携わった多くのスタッフ等の氏名及びその役割が、エンディング等においてテーマ音楽の流れるなか画面上に表示されることを通例とするが、本件ゲームソフトにおいてもまったく同様に、本件ゲームソフトの制作に携わった多くのスタッフ等の氏名・役割が表示されており、そのスタッフの数や役割の内容も、劇場用映画とほぼ同様のものとなっている。
 以上の点においても、本件ゲームソフトが著作権法の予定する「映画の著作物」そのものであることが如実に現れているのである。

二 ゲームソフトの制作過程

1 本件ゲームソフトの制作過程は、概ね左記の通りである。 

(一)企画書及びシナリオの作成、並びにゲームソフトの内容の詳細の決定
 まず、プロデューサーやディレクター等が中心となって、ゲーム全体の骨格、コンセプト等をまとめ、企画書の骨子が作成される。次に、ディレクターらが、物語の舞台、ストーリーの概要、登場人物の大綱を決定し、詳細な企画書を作成する。プロデューサーが、左記の詳細な企画書の内容をされに検討し、ゲームソフトの製作を進めるべきかどうかを最終的に決定する。ゲームソフトの製作を進めることが最終的に決定された場合には、次に、シナリオ・ライターによって、シナリオが作成されることになる。シナリオは、劇場用映画で製作されるシナリオと同等のものであって、物語の展開、場面や登場人物の台詞等が細やかに記されているものである。
 次に、プレイヤーの操作によるゲームの展開を考慮しつつ、シナリオに基づくゲームソフトの内容の詳細が決定される。すなわち、具体的にどのようなカット割り、カメラアングルでどのような映像を表現するか、という事項や、ゲームのシステム、難易度をどの程度のものとするか、等の事項が決定されることになる。

(二)ゲームの場面、映像等の作成
 前記の通り決定されたゲームソフトの内容の詳細に従って、ディレクター等によって、絵コンテ等が作成され、それに基づいて、キャラクター・デザイン担当者、映像作成担当者、サウンド担当者等によって、ゲームの場面、映像、音楽、サウンド等が作成させる。 
 ゲームソフト中に用いられる映像には、登場人物の姿態や表情等を表現する動画像、各場面の背景の動画像、ゲームソフトのオープニングやエンディング、その他随所で上映される高解像度のコンピュータ・グラフィックス等が含まれるが、それぞれについて、担当者が決められて、ディレクター等の指示に従って、制作が進められることになる。
 また、本件各ゲームソフトでは、臨場感を高めるために、効果音が多用されており、また映像に合致したテーマ音楽・背景音楽が用いられるが、これらのサウンドの製作を担当するのが、サウンド担当者である。サウンド担当者は、テーマ音楽・背景音楽については作曲家に委託して創作された楽曲を、シンセサイザー等を駆使して、デジタルデータ化したり、またリアリティを持った映像表現が実現されるように、キャラクターが遠ざかると音も小さくなるようにする等の創意工夫を凝らして、様々な効果音等のサウンドを制作し、映像と同期してこれと一体化した聴覚的効果を生みだしている。

(三)プログラミング
 前記の通り作成された映像やサウンドは、プログラマーによって、ゲームソフトに組み込まれ、ゲームの進行にしたがって、適切に映像を再現し、かつ映像に同期してサウンドが再現されるように調整される。プログラマーには、(1)個々のキャラクターの動きを表現するためのプログラムの作成担当者、(2)各イベント(場面)の展開等のためのプログラムの作成担当者、(3)ゲームソフトのシステム部分の作成担当者等が含まれるが、各自がディレクターの指示の下で、それぞれ作業を分担しあって、連携して、作業を進めていくことになる。左記のプログラミングの段階を経て、ゲームソフトの試作品が製作される。

(四)編集、点検作業
 ディレクターは、左記の通り作成された試作品を視聴し、カット割り等の点検や編集作業等を行い、ゲームソフトのベータ版が作成される。

(五)バグ取り、CD ROMの作成段階
 仮マスターには、通常、バグが混入しているので、仮マスターを実際にプレイしてみて、プログラムのバグを発見して、これを取り除くための作業が行われる。このための作業は、一般に「バグ取り」等と呼ばれている。バグ取りを経て、マスター・ディスクが作成され、ゲームソフトが完成し、CD ROMへの焼き付け作業を経て、本件各ゲームソフトが発売されるに至ったものである。

(六)製作期間及び製作費用
 本件各ゲームソフトの製作期間は、目録一のゲームソフトについて約三年、目録二にゲームソフトについて約半年である(構想期間を含む)
 また、制作費については、目録一のゲームソフトについて約一三億五九〇〇万円、目録二のゲームソフトについて約六億五〇〇〇万円である(宣伝費を含む)
 なお、劇場用映画については、実際に撮影が行われるクランク・インからクランク・アップまでの期間が三〇日から四五日程度であり、その後の編集作業期間が約一ヶ月程度である。また、劇場用映画の製作費は、全国的な配給網を持つ大手配給会社により配給・上映される作品では平均すると二億円程度であり、当初少数の映画館で上映され、順次多くの映画館で上映される作品(このような作品にも国際映画祭で受賞するような水準の高い作品も少なくない)の制作費の相場は、五〇〇〇万円から七〇〇〇万円程度と言われている(乙第三一号証)。
 このような数字と比較すると、本件各ゲームソフトの製作は、劇場用映画の平均的水準以上に長期間と多額の制作費とを必要としているのであり、この点において劇場用映画の中でも「超大作」と呼ばれるものにも匹敵するということができる。

2 本件ゲームソフトの製作過程は、以上のように劇場用映画の製作過程と殆ど同様であるものということができる。
 すなわち、企画書の作成から、シナリオの作成までの流れは、劇場用映画の場合と殆ど同一であるし、その後の映像やサウンドの製作過程は、実写映画でいえば撮影の段階、アニメーション映画で言えば、絵コンテの作成からセル画の作成の段階と同様のものということができる。また、その後のプログラミング、編集、点検作業等は、劇場用映画では、フィルムの編纂、編集の過程と同様の性格のものということができる。さらに、本件ゲームソフトの製作に要する期間及びその制作費の水準も、劇場用映画を凌駕しているほどである。よって、本件ゲームソフトの製作過程等の観点からも、本件ゲームソフトと劇場用映画とを区別する合理性は全く見いだすことができない。
 このように本件ゲームソフトは、著作権法が予定している「映画の著作物」そのものであって、決して「映画の著作物」の周辺的なものとして位置づけられるべきものではないから、著作権法が「映画の著作物」に与えた権利をそのまま享受することができるのは当然のことであって、これを制限されるべき合理的な根拠は何ら存在していない。
(なおゲームソフトは、この数年の間に長足の進歩を遂げており、ゲームソフト草創期のゲームソフトとは比較にならないほど、視聴覚的表現の方法が向上しており、劇場用映画との近似性が益々高まっている。この近似性の高まりは、表現方法のみならず、ゲームソフトの製作過程に多数の創作行為者が組織的に関与して総合芸術として製作されること及び製作に携わる創作行為者等の役割分担、製作への関与の仕方、さらには長期の製作期間と莫大な製作資金を必要とする点等においても、顕著に見られるところである。乙第四四号証)

第二 劇場用映画とゲームソフトとの上映利用における類似について
 劇場用映画の上映利用は、映画館での上映にとどまらず多様化の傾向を見せているところ、ゲームソフトも、そのパッケージの購入者によって家庭内で個人的に視聴されるのみならず、「公の上映」による利用が行われており、上映利用の形態において劇場用映画と極めて類似しているので、この点を左のとおり主張する。

一 現在では、テレビゲーム用ゲームソフトと劇場用上映映画との区別自体がなくなってきている。
 ゲームソフトにおいても、コンピュータグラフィックスを用いることなくCD ROM内に実写映像やアニメーションをそのまま収録し再生することは容易に可能であり、実際にも多く行われているところである。今後ともこの方向の発達はとどまることはないものと考えられ、今後開発されるテレビゲーム機器はDVDの再生と同様の実写映像やアニメーションの再生が可能となるとの発表もなされているところである(平成11年3月2日新聞 乙第32号証)。このような機器で旧来の映画などに収録されていたDVDも再生できるようになれば、需用者はますますテレビゲーム用ゲームソフトと劇場上映用映画との区別を意識しなくなるし、両者の流通も区別されなくなっていくものと予想される。
 また、「やるドラ」シリーズ(乙第33号証、検乙第 号証)に代表されるように複数の選択肢の中からストーリーを選ぶだけのゲームソフトも存在する。
 他方、DVDに収録される映画の中では、「マルチストーリー」「マルチエンディング」として、視聴者が複数の選択肢の中からストーリーを選ぶことが可能となっているものや「マルチアングル」として同一場面を複数の視点から選択して見ることのできるもの等が存在している(乙第34号証)。今後、DVD機器の普及に伴って、映画館上映用を撮影する場合にもあらかじめ複数のカメラで撮影したり複数のストーリーを撮影したりしておき、DVDソフトを発売するときにはマルチアングル・マルチエンディングを謳い文句にすることが容易に予想されるところである。原告は映画の著作物たるべき要件として「固定」について、一つのストーリーが固定されていることが必要であると主張するようであるが、このような作品は映画の著作物でないと主張するのであろうか。

二 現在、映画の著作物であっても映画館で上映されることを予定していない映画がきわめて多く製作され多数存在している。
 例えば、Vシネマなどの代表されるように販売用またはレンタル用のビデオテープやレーザーディスク(LD)として頒布することを当面の目的として製作される映画が多く存在する。
 また、テレビ放映用に製作されるドラマなども、映画館で上映されることを予定しない映画の著作物である。
 そして、これらの映画の著作物は、作品の人気・評判に応じて、当初の媒体での利用を離れて多種類の媒体で販売頒布上映されるようになっている。Vシネマなどビデオ販売用またはレンタルビデオ用の映画の著作物もケーブルテレビや放送衛星(BS)・通信衛星(CS)を利用したテレビなどで多く放送されるようになっている。また、テレビ放送用に製作された人気ドラマやアニメの多くは販売用またはレンタル用のビデオテープやレーザーディスク(LD)となって流通しているのである。
三 加えて、大型のプロジェクターなどの機器の発達により、ビデオテープやレーザーディスクなどに収録された作品を有料・無料で上映することも広く行われるようになってきている。

(1) 映写技師を要せずに上映できることから、少人数を収容する映画会場を複数設置し機動的上映を行う映画館(ビデオシアター)なども出現している(乙第35号証)。

(2) 一方では、このようなプロジェクターなどの機器を用いて公民館などの施設で違法な上映を行う業者も現れてきているところである。

(3) 個室ビデオなどの名称でビデオブース(ビデオデッキとテレビを設置した一名あるいは数名のグループが入ることのできる小さな個室)を多数設置し、それぞれのブース内で顧客の選択する作品を上映して視聴されているところも多数存在している(乙第36号証)

(4) 飲食店やホテル等の公共の場所で公に上映して利用されることも増加している。

(5) 特にホテルでは、館内CCTV放送(閉回路テレビ)の施設を利用して、ホテル利用者の希望により選択された作品を有料で視聴されるサービスをおこなっているところが多い(そのサービスの中には、同一作品を同時に視聴させるサービスのほか、客室ごとに顧客のリクエストする作品を視聴させるサービスも広く行われている。

(6) 飛行機内などでもプロジェクターで上映されることもあれば、各座席の液晶画面で複数の映画を上映して、乗客が選択できる場合すら存在する(乙第37号証)。
 そして、劇場用映画の著作権者は、右のような上映利用から上映許諾料を徴収しているのである(乙第38号証)
 もとより、ビデオテープやレーザーディスクに収録された作品は、当初の製作目的が劇場上映用映画であったか、テレビ放映用映画であったか、ビデオ販売レンタル用であったかを意識せずに利用されるのである。そして、時にはホテルで宿泊客に貸し出されたり飛行機内で乗客に貸し出されたりするのである。

四 他方、ゲームソフトも、劇場用映画の場合と同じく、さまざまな形態において公に上映利用されている。

(1) まずホテル等においては、劇場用映画とゲームソフトとが同じ機器を利用してフロント等で統一管理されており、顧客による個別のリクエストに応じて、劇場用映画と同じ館内CCTV(閉回路テレビ)の設備を利用してゲームソフトの公に上映が行われている(乙第39乃至41号証)。
 この場合、劇場用映画を収録したビデオグラムやゲームソフト自体はフロントに置かれているのであり、上映主体はホテル側であって、その上映主体からみてホテルに来店する顧客が不特定多数の者であることから、右のような劇場用映画やゲームソフト等の利用はカラオケボックスにおける「カラオケビデオ」(レーザーディスクカラオケや通信カラオケなど)の上映と同じように「公の上映」に該当するものである(東京地裁平成10年8月27日判決参照)。

(2) また最近は、「ゲーム喫茶」と称して、店内に多数の家庭用テレビゲーム機器とゲームソフト・パッケージを備え置き、顧客の選択に応じてこれを遊技させるという営業形態のものもある(乙第42号証の新聞記事参照。もっとも、この記事で紹介されている当該ゲーム喫茶は、ゲームソフトの著作権者から上映許諾を受けることなく営業を開始したため、著作権者の団体から上映権侵害であると警告を受け、その後、右上映利用を廃止した。)。
このような形態におけるゲームソフトの利用も、上映主体はゲーム喫茶店側であって、上映主体から見て顧客が不特定多数の者であることから、劇場用映画が飲食店等やビデオブースで上映される場合と同じように、ゲームソフトを「公に上映」して利用するものである。
いわゆるカラオケボックスにおいてゲームソフトの上映が行われることもある。

(3) また昨今の家庭用ゲームソフトには、ゲームセンター向けのゲーム機に収録されているゲームソフト(アーケードゲームという)を家庭用に移植(転用)したものも少なくないところ、アーケードゲームがゲームセンターで利用されるのは、劇場用映画が前述のビデオブースにおいて上映されるなどと同様の「公の上映」による利用形態である。
アーケードゲームもそれを家庭用に移植したものも、著作物としては同一であり、一つの著作物が家庭用パッケージに収録して販売されたり、あるいはゲームセンターでの公の上映利用されたりするのである。

五 以上のように、昨今においては劇場用映画の上映利用の方法がフィルムによる映画館での上映だけにとどまらず、広くビデオブースやホテル、飲食店等で公に上映され、そのような上映行為から映画著作権者は上映使用料の徴収を行っているところ、ゲームソフトにおいても、それと同様に、「公の上映」により利用される(つまり上映権の対象となる形態での利用がなされる)ことが益々広く行われるようになってきている。
 そもそも、現行の著作権法制定当時、映画の著作物の主たるものは映画館において上映される映画であった。しかし、当時においても映画館上映用のフィルム以外の媒体(八フィルムやビデオテープ)を用いた映像により構成される著作物は存在し、そのような著作物についても映画の著作物として法的保護を与えることとして映画類似の著作物の類似規定(二条三項)が設けられているのである(乙第45,46号証参照)。このことからは、立法者は、将来において種々の媒体を用いた映像の著作物が増加することを予想し、わざわざ映画類似の著作物の定義規定(二条三項)を設けてそのような著作物についても映画館上映用のフィルム映画と区別することなく同一の法的扱いと保護を与えることを明らかにしようとしたものと考えられる。
 劇場用映画とゲームソフトとは、法律上ともに「映画の著作物」として同一に扱われているのみならず、上映利用の具体的方法においても類似性・共通性が見られ、ゲームソフトの「公の上映」による利用方法もさらに拡大しつつあるから、実際上も、益々もって劇場用映画とゲームソフトとの権利内容を区別して考えることができない。

第三 中古品と劣化
 
 原告は平成10年11月22日付け準備書面において「劣化」について論じているので、念のため、ごく簡単に付言しておく。
 ゲームソフトにおいては、ゲーム機械に入れて当該ゲームが支障なく楽しめれば、当該ゲームソフト(CD ROM等)を購入した目的を100パーセント達することができる。逆に、傷ばどにより当該ゲームの一部でも支障が生じるのであれば、それは「不良品」であり、販売し得ないのである。
 ゲームを楽しむというゲームソフトの本来の目的においては新品でも中古品でも、さらには何回中古販売されたものであっても、全く等価値である。(だからこそ、中古品の程度により値段が種々に異なるということなく、同じゲームソフトの中古品は同じ値段で買い取られ、また、販売されるのである。乙第43号証)
 そして、このようなことから、ゲームを楽しむというゲームソフトの本来の目的においては、ゲームソフトの中古品は新品と市場において完全に競合してしまうのである。
 ゲームソフトにおいて「劣化しない」といことは、まさに右の意味において述べられているのである。
 

 
  『東京訴訟』