<プレスリリース資料>
中古ソフト問題・東京訴訟の結審について
1999年3月16日
中古ソフト問題・東京訴訟・原告弁護団
1 中古ソフト問題・東京訴訟の経過
東京地方裁判所平成10年(ワ)第22568号(民事第46部係属)
頒布権に基づく差止請求権不存在確認請求事件
原告 ソフト販売業者側((株)上昇) 被告 ソフトメーカー側((株)エニックス)
1998.10. 5 提訴
1998.11.12 13:15- 第1回期日 原告側 : 訴状−陳述
被告側 : 答弁書−陳述
1998.12.22 13:10- 第2回期日
原告側 : 第2準備書面−陳述
被告側 : 準備書面(1)−陳述
1999. 1.21 11:45- 第3回期日
原告側 : 第3準備書面−陳述
被告側 : 準備書面(2)−陳述
1999. 2.25 11:45- 第4回期日
原告側 : 第3準備書面−陳述
被告側 : 準備書面(3)−陳述
1999. 3.16 11:45- 第5回期日<結審>
2 中古ソフト問題・東京訴訟の争点
<被告側の主張>
@ ゲームソフトは「映画の著作物」に該当する。
A 「映画の著作物」には無制限の「頒布権」が認められる。
B したがって、ゲームソフトには無制限の「頒布権」が認められるから、著作権者の 許諾がない中古ゲームソフトの売買は違法である。
なお、@の主張とAの主張のどちらか1つでも否定されれば、Bの結論は成り立たない。
<原告側の主張>
(1) ゲームソフトは「映画の著作物」に該当するとは言えない。
@ ゲームソフトは、「映画の著作物」の要件を充たしていない。
(「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され」たものに該当せず、「物に固定されている著作物」に該当しない。)
A どの条文も立法の趣旨に即して解釈されなければならず、著作権法第26条が「映画の著作物」についてだけ「頒布権」を認めたのは、劇場用映画特有の流通形態を保護するためであり、その立法趣旨からすると、流通形態が劇場用映画と異なるゲームソフトについては「頒布権」が認められる「映画の著作物」と解釈すべきではない。
(2) 「頒布権」には限界がある。
@ 「頒布権」については、「頒布」が最初に流通におくこと(第一頒布)を意味するとするか、複製物が最初に適法に流通に置かれた後は「消尽」する(「頒布権」が及ばない)とすること(いわゆるファーストセール・ドクトリン(第一次販売の法理)を認めること)が世界的な常識であり、グローバル・スタンダードである。
A 特許権について「消尽」を認めたベーベーエス(BBS)事件最高裁判決(平成9年7月1日)の趣旨からしても「頒布権」は商品が最初に適法に流通に置かれた後は「消尽」すると考えるべきである。
(以下の(3)・(4)は補足的な主張)
(3) 日本の法制は全体として中古ゲームソフトの売買を合法としている。
@ 自由主義市場経済を基本とする日本の法制では商品の流通の自由が不可欠である。そのために独占禁止法は不当な取引制限や不公正な取引方法などを禁止しており、中古ゲームソフトの売買を制限することは独占禁止法に違反する。
A 地球温暖化問題を含め、今後ますます環境の保護が重要になってくるが、日本の環境基本法・環境基本計画等からしても、「使用済み製品の再利用の促進」が強く求められており、中古品市場の存在は日本の環境法制に適合する。中古ゲームソフトの売買を禁圧することは、人類の最重要課題の1つである環境保護に反する。
B 古物営業法はゲームソフトの中古売買が適法であることを前提としている。
(古物営業法第15条第1項第1号、古物営業法施行規則第16条第2項第2号)。
(4) 違法論が主張する心配には合理性・正当性がない。
@ 中古品として販売された本数について新品を販売できる機会を喪失し、損害を被るという主張(販売機会喪失論)については、中古品市場がなければ新品の販売が増加したはずであるとは言えない。例えば、ユーザーのかなりの部分を占める子どもたちは、購入したソフトを使用した後に中古市場に売却し、その代金と小遣いを併せて、別の新品を購入することが多いから、もし中古品市場が存在しなければ、新品の購買力が低下する。また、ゲームソフトの中には使用してみて面白さを感じない「クソゲー」と呼ばれるソフトも多い。もし中古品市場がなければ、購入するソフトが「クソゲー」であるリスクとの関係で購入が抑制される。したがって、中古市場があるからこそ新品が多く売れるという面を否定できない。なお、例えば、自動車については新車市場と中古車市場が共存共栄の関係にあるとされており、ゲームソフトについても同様な状況がある。
A 開発に巨額の資金がかかるが、中古品市場があると、投下資本が十分に回収できないという主張(投下資本回収不能論)については、@を前提にしている点で不当であるが、その点を別にしても、自由主義市場経済の下においては、製造にあたり投入した資金が必ず回収されることが保障される商品などは存在しない。投下資本の金額にかかわらず売れるかどうか、いかなる価格で売れるかどうかなどは消費者の判断に委ねられている。ゲームソフトについては開発に資金をかけすぎであるという指摘もあるが、いくらでも資本投下をすればよく、そして、投下した資本は必ず回収が保障されるべきであるということにはならない。市場で価格性能比が肯定的に受け入れられるかどうかについての読みは企業家の判断の問題である。
B 中古品市場があると、新品の価格を高くせざるをえず、高い価格で購入することになるユーザーに不利益をもたらすという主張(価格高騰論)については、@を前提にしている点で不当であるが、その点を別にしても、いかなる価格を設定するかは売主の自由である。売主が設定した価格で売れるかどうかは価格効用比等についての消費者の判断による。
C 中古品市場があると、メーカーの商品開発意欲が減退し、ゲームソフト産業が衰退するとの主張(開発意欲減退・産業衰退論)については、これまで中古ゲームソフト市場が現実に存在してきたにもかかわらず、ゲームソフトの開発・販売活動は活発に行われてきたから、正当な心配とは言えない。どんな商品の市場についても、価格効用比等についての消費者の判断を踏まえて開発意欲を持つ者が市場に参入することで成り立っている。
(5)結論として
日本においてだけ(世界の常識ないしグローバル・スタンダードに反して)、ゲームソフトについて無制限に流通をコントロールする権利を認め、特別な保護をすべき合理的理由は考えられない(日本だけがゲームソフトについて特別な保護をすると国際的な経済紛争に発展する危険がある。)。
また、日本において、ゲームソフトについてだけ(他の多種多様の著作物や商品と異なって)、無制限に流通をコントロールする権利を認め、特別な保護をすべき合理的理由は考えらない(同様な流通形態の各種の商品ー著作物では、例えば、書籍。コンピュータ・ソフトが組み込まれている商品としては、例えば、自動車、家電製品など。知的財産権が関係する商品としては、特許技術を利用した各種商品、商標が付された衣服などでは、中古品売買が禁止される(あるいは、禁止されるべきだ)という主張はない。)。
<参考>
※藤田康幸(弁護士)・藤本英介(弁護士)・小倉秀夫(弁護士)著
『著作権と中古ソフト問題 ーいま問われる著作権のあり方ー』
発行:(株)システムファイブ(TEL 03-5340-1221)
※「ARTS裁判報告」http://www.arts.or.jp/
3 他の訴訟について
中古ソフト問題・大阪訴訟:
大阪地方裁判所平成10年(ワ)第6979号(第21民事部係属))
頒布権に基づく差止請求事件
原告 ソフトメーカー側((株)カプコン外5名)
被告 ソフト販売業者側((株)アクト外2名)
※現在大阪地裁で審理中
対ドゥー訴訟:被告の「認諾」により判決に至ることなく終了
東京地方裁判所平成10年(ワ)第12874号(民事第46部係属)
頒布権に基づく差止請求事件
原告 ソフトメーカー側((株)カプコン外4名)
被告 ソフト販売業者側((株)ドゥー)
※被告が争うことなく「認諾」したため、判決が出ることなく訴訟が終了した。
裁判所の判決が出ていないので、「判例」にはならない。
以上
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