中古ソフト問題・東京訴訟
「原告側第三準備書面」


平成一〇年(ワ)第二二五六八号

  著作権に基づく差止請求権不存在確認請求事件

                           原    告         株 式 会 社  上   昇

                           被    告         株 式 会 社  エニックス

     平成一一年一月二一日

第 三 準 備 書 面

 

東京地方裁判所民事第四六部B係 御中

                              右原告訴訟代理人

                                弁 士        椙 山 敬 士

                                  同          藤 田 康 幸

                                  同          小 川 憲 久

                                  同          吉 田 正 夫

                                  同          藤 本 英 介

                                  同          中 野 通 明

                                  同          杉 浦 幸 彦

                                  同          小 倉 秀 夫

                                  同          岡 村 久 道

                                  同          木村 圭二郎

                                  同          北 岡 弘 章

                                  同          錦    徹

                                  同          神 頭 正 光

                                  同          志 村   新

                                  同          濱 田 広 道

                                  同          鈴 木   誠

                                  同          大 土   弘

                                  同          岩 崎   晃

                                  同          権 藤 龍 光

                                  同          追 川 道 代


  被告の平成一〇年一二月二二日付け準備書面(一)における主張に対する認否


第一 「被告の著作権」について

被告が本件各ゲームソフトについての著作権者であることを認めるが、本件各ゲームソフトの映画の著作物性については争う。

尚、被告が主張する各事実について、本件各ゲームソフトが映画の著作物ではないことに関連する限度で以下のとおり認否を明らかにする。但しこれは、本件各ゲームソフトに関して発生している著作権が被告に帰属することを争う趣旨ではない。

1 本件各ゲームソフトたるプログラム著作物が、いずれも家庭用テレビゲーム機「プレイステーション」用ソフトウエアとしてCD-ROMに収納されているという主張、及び

2 目録一のゲームソフトが平成一〇年七月三〇日に、目録二のゲームソフトが平成一〇年一月二九日に、各々発売されたという主張
を認める。

1 目録一のゲームソフトのうちゲーム画面を伴わない映像部分がもっぱら視聴覚的鑑賞の対象とされているという主張、

2 本件各ゲームソフトが映画の著作物であるという主張、及び

3 著作権法第二九条に基づいて、本件各ゲームソフトに関する映画の著作物が被告に帰属するという主張
を否認し、その余は不知。

 尚、被告の前記準備書面(一)3頁一二行目にある「その作成物の思想又は感情」というのは、何かの間違いと思われる。


第二 「本件各ゲームソフトの映画著作物性」について

一 「ゲームの概略」について

(一) 「スターオーシャンセカンドストーリー」に関する第一段落の記述を認め、のうち、それが「ロールプレイングゲーム」と呼ばれる種類のものであることを認め、その余は不知。「ストーリー」なるものが著作権法上、いかなる位置付けを有するのか不明である。第二段落の記述については「手強い」、「壮絶な」、「壮大な」という評価の部分は争うが、それを除き概ね認める。

(二) 「バスト ア ムーブ」に関する第一文を認めるが、第二文は否認する。競っているのは「ダンサー」ではなく、「ダンサー」を操る遊技者である。


二 「本件ゲームソフトの映画性」について

本件各ゲームソフトを「映画」と分類すべきとする主張は、これを争う。

第一段落において、被告は「本件各ゲームソフトがいずれもゲーム的要素を有することはいうまでもない」として、ゲームであることを自認する。本件各ゲームソフトは、いずれもゲームとして製作され、ゲーム用ソフトとして販売されているものであるから、本件各ゲームソフトはゲームソフトそのものであって、「ゲーム的要素を有する」などと評するのは事の本質を見誤らせるものである。第二、第三段落は認める。

第四段落における「このようなゲームの過程が、四次元的時空を表す舞台の中で動態的に映像化され」という被告主張は、国語の問題として趣旨が明確でない。加えて、「四次元的時空」を表す舞台の中で「動態的に映像化され」というように、一義的に明らかでない抽象的用語を定義することなく用いるため、右の被告主張は意味不明で認否できない。また、そもそも、舞台と目すべきものが存在するのは、ダンサーが踊るための舞台のある目録二のゲームソフトだけである。

本件各ゲームソフトにおいて、ゲームの映像と音楽より一定の視聴覚的効果が存在していることは認める。しかし、目録第二のゲームソフトは、遊技者がダンサーを音楽にあわせて(シンクロナイズさせて)ダンスさせることをゲームの主眼としており、映像と音楽はシンクロナイズされていない(ダンサーの動きと無関係に、音楽は進行していく)。又、「視聴覚的鑑賞性」なる用語は、一義的に明らかな意味を有する言葉ではない。何をもって「視聴覚的鑑賞性」と評価するのか不明である。被告が、本件各ゲームソフトが、映画と同様に独立の作品として鑑賞に耐えられる内容を有する映像著作物であると主張するのであれば、否認する。


三 「本件各ゲームソフトの映画著作物性」について

(一)    (一)記載の被告の主張については、「映画の著作物」の定義規定の引用条文及び末文における引用条文が著作権法第一〇条三項とされているが、二条三項の誤記であることを前提に、認める。

(二)    (二)記載の「本件各ゲームソフトが映画のジャンルに属するものである」との被告の主張は否認する。

(三)    (三)記載の被告の「固定性」に関する主張は、否認し、争う。「固定性」の要件を、被告は「映画著作物が何らかの有体物である媒体によって保持されていることを要するというだけのこと」と解釈されるべきであると主張し、「再生される映像の表出の仕方や個々の映像の順序まで限定する趣旨は全く含まれていない」と主張する。しかし、「再生される映像の表出の仕方や個々の映像の順序」に何らの制御もなされていない場合には、未編集の映画フィルムの集合と何らの違いはなく、物に固定されていないと解すべきである。被告の主張は、「映画の著作物」の固定性の要件を正解しないものである。固定性の要件については、原告第一準備書面、一一頁以下に詳述したところである。「固定性」の要件が、「媒体の種類をフィルムに限定したり」する趣旨は含まないことはそのとおりであるが、原告が「媒体の種類をフィルムに限定」すべきだという主張をしたことはない。

本件各ゲームソフト・プログラムが有体物であるCD-ROMに収納されていることは認める。しかし、CD-ROMのような有体物に収納されているだけで、本件ゲームソフトの影像表現が「物に固定されている」とは言えない。被告は、「再生される映像の表出や個々の順序まで限定する趣旨は全く含まれていない」と主張するが、この立場に立てば、編集を全く経ていない撮影済みフィルムの集合といえども、映画の著作物に該当するということになる。しかし、未編集の撮影済みフィルムの集合が映画の著作物と目し得ないことは、三沢市市勢映画事件最高裁判決が明らかにしているところである(原告第一準備書面一五頁以下において、詳述した)。被告の主張は、この最高裁判決を無視した立論である。

「ゲーム性は映画性を打ち消すことにならない」、「映画という芸術形式に遊戯性があってはならないという理由は見い出し難い」との主張は、否認ないし争う。

(四)    (四)記載の被告の主張について、本件各ゲームソフトが、その製作に関与した者による精神活動の成果であることは争わない。しかし、だからといって、本件各ゲームソフトが「映画」の著作物であるということにはならない。

本件各ゲームソフトがCD-ROMに収納されていることは認める。但し、「プログラムの命令により、同じくROMに収納されている影像(及び音声)データが抽出されて」、自動的に「ゲーム機の表示装置に順次表示され」る訳ではない。遊技者がコントローラーを操作することによりプログラムに対する指令を行い、かかる指令をプログラムが動作することにより実行し、その結果所定の影像(及び音声)データが抽出されて」、「ゲーム機の表示装置に順次表示され」るのである。被告の主張は、「遊技者がコントローラーを操作することによりプログラムに対する指令を行なう」というゲーム機の本質を看過するものである。そして、かかる本質故に、本件各ゲームソフトの視聴覚的表現は、遊技者が遊技をする度に異なるものとして、表示されるのであり、実際には全く同一に再生することはおよそ不可能なものである。だからこそ遊技者が主体性を持ち、ゲームとなりうるのである。視聴覚的変化がビデオゲームの価値であるから、映像が「固定」されているはずがないのである。

参加者の精神活動があったことは認めるが、参加者が思想、感情を集積したか否か、参加者がどのような思想、感情を集積したかは知らない。

(五) 「映画の著作物」の要件が何ら満たされていないのである。また、すでに第一準備書面で詳細に説明したとおり、ゲームソフトの頒布権の有無が争われた裁判例は存在しない。これらの判例を、ゲームソフトの映画著作物性を肯定したとして引用することは、不適切である。

尚、乙第九号証に、被告が引用する表現があることを認める。しかし、「ゲームソフトの取扱いについては、映画の著作物に該当するとの判例もあり、その解釈に委ねることとする」と述べられているように、ゲームソフトが映画の著作物か否かは、裁判所の判断に委ねるというに過ぎないから、何ら被告の主張を補強するものではない。

第三 「被告の頒布権」について

一 被告は、映画の著作物について、法第二六条一項にいう頒布が最初の「頒布」に限定されるとするなら、他の著作物より、頒布権の範囲が狭くなる、と主張する。しかし、原告の第一準備書面(一一六頁)を読めば明らかなとおり、原告は「一旦適法に複製された複製物が適法に『譲渡』された場合に」当該複製物の再譲渡に関する限りで頒布権が消尽(用尽)する、と主張しているに過ぎないのである。

二 第ニ項における被告の主張については、争う。

三 頒布権の解釈については、争う。被告が、本件各ゲームソフトについて頒布行為全般をコントロールすることができる頒布権を有するとの主張は、争う。

第四 「原告の無許諾頒布行為」について

一 平成一一年一月一日現在において、原告の行うフランチャイズには、フランチャイジー店鋪一五〇店、並びに直営店鋪五〇店が存在するが、フランチャイズ店の経営はフランチャイジーである各店鋪経営者が独自に行うもので、原告が行うものではない。尚、原告は、米国に店鋪を有しない。

二 被告に許諾を与える権限がない以上、被告が許諾を与えることができないのは当然である。

第五 「差止請求権の発生」について

 被告の主張を争う。

 
  『東京訴訟』